その２

その頃の私は派遣先でもイジメられていた。

正社員ばかりのところに派遣は３人。
しかも内勤が２名で受付の派遣はたった一人だった。
前任者たちはすでに５名辞めていた。

重々解って入った。
最初の人は３か月。つぎは２か月。とイジメに拍車がかかり、
私の前の人は５日で辞めていた。

そこに入って私は１ヶ月半頑張っていた。
時給も高いし収入もいい。
だから、必死に我慢していた。

ところが、息子の盗みが２回重なると私は家を空けることが恐ろしくて不安でたまらなくなった。
そして居る事務所では１日中、ひたひたとイジメに遭いトイレの中でしか呼吸できない気分だった。

息子は一旦、実家に預かった貰い母が諭してくれた。
でも、何と言えばいいのだろう。

この母ですら、私を苦しめてきた一番の人なのに。
「お母さんはね、あのじいちゃん、ばあちゃんにお金を貢いで、上の兄貴にも貢いできたのよ。
高校出てから働いて貯金して、そのお金を自分で使ったのはたったの２回。
ハワイに強行手段で行った時とＣＤデッキ買ったときだけなの。
本当なら数百万円はあった貯金はみんな血のつながった家族に盗られた。
そして、唯一信じていた、わが子までが、１度はあることだとおもったけど
話し合って２週間しか経たないで、盗って行くなんて、誰を信じればいいの？
何のために働かなくちゃいけないの？」

「お前とは暮らせない。
いつまた、お金を盗られるか、家賃払えなくなったらどうしよう。
そう想うと仕事に行くことも、寝ることもできなくなったよ。
お母さん、このままでは生きていけない。自分の命の為にお前とは暮らせない。」

小学６年生に厳しい言葉だったかもしれない。
でも、１か月で九万円も取られたら、本当に生活も入学もどうしたらいいか解らなくなっていた。

息子は土下座して
「もうしません。だから、ここに置いてください。」
と泣いた。

「信頼を裏切るのは一瞬。信頼を取り戻すのには３年の月日がかかる。覚えておいてね。
お母さんはお前が可愛い。だけど、だからこそ、こんな子供にしてしまったことをどう償えばいいのかわからない。
そして、信じられないお前とどう生活していけばいいのか解らない。
お母さんが安心できるように、お金でいることがあればキチンと話して。
安心できるように、勉強を頑張って。
お前ができる信頼回復はそれしかないと思う。」

暴力を振るわれ二人の子供たちはチックになっていた。
離婚して暴力も夫婦喧嘩？も見ることが無くなり、虐められる事もなくなると二人のチックは消えた。

父親と住みたいなどと二人とも言わない。
あの夕飯時の緊張はまだ忘れていなかったから。

けれど、息子の怒り不満はくすぶっている。
何が不満なのか？
解らないまま、私は自分が壊れていくのを感じていた。　　またつづく。

はるか昔、息子が家のお金を持ち出した時のお話１

離婚して１年。

いじめられっ子だった息子は転校とともにイジメる側になったことがある。
実家の２階の子供部屋にはいつも６、７人の友達が来ていたし、
まだ元気だった母も私も、友達と面識を作って仲よくしていた。

だけど、息子の心には大きな不満と私への憎しみが渦巻いていたのだ。

夏の家庭訪問でそのことを知り、
「すぐにお知らせしようと思ったのですが、子供たちが自分たちで解決したいと云うので
それを待ちました。現在はわだかまりもなく仲良くしています。それでお知らせしました。」

転校生であることに気遣って、クラスの子供達も先生も優しく息子に接してくれていた。
私は担任の前で、土下座した。

息子が悪いんじゃない。私の躾がなってないから。
離婚という大きな傷を与えたからだと思った。

息子を叱らなかった。

それが、息子には返って堪えたようで、クラスで問題を起こすことはなくなった。

けれど、１年後、今度は中学入学のために積み立てておいたデパートの商品券を６万分も盗んだ。

クリスマスが近く、息子が
「プレステが欲しいんだけど・・・」
とプレゼントのおねだりをした。
「う～ん、あれ、高いしね。ソフトも入れるとどうだろう？」
と、すぐに肯定はしなかった。

でも、少し考えてはいた。

が、

息子の怒りは心の中で爆発して、盗んだ商品券でプレステとソフトを買い、
実家の子供部屋に隠してあった。

あまりの桁に、盗んだ事を怒る前に
「やることが違うな～。さすが、わが子。いざとなったら凄く大胆だ。」
と、のどかな気持ちを私は持っていた。

だから、冷静に叱った。
通帳を見せて家賃から私の収入から電気代、光熱費などすべて計算して見せた。

そして、プレステは取り上げて即、売り、２万を回収した。
商品券も他の所に念のため隠した。
が、
２週間もしないで３万無くなった。

今度はかなりムッとした。
何に使ったのか尋ねるとカードを買ったと。レアカードが欲しくて３万円分カード３００枚くらいを買ったと言った。

レアカードがなければ、友達と遊べないような付き合い方をしているのか！
それがまず、腹立たしくなった。
その１枚の為にあとのカードは不必要だと云うのも、またしても腹が立った。

「どうするの！中学に行くのに制服代をカードに使って、あんた何着て学校に行くの！」
と、この時は怒った！！！
息子は泣いて謝ったが、心の中の憎しみ、怒りが納まっていないのは解った。

何がこんなに息子をいらだたせるのか？
私にはそれが解らず、大きな不安を抱えた。　　　　　つづく